自動販売機設置者必見!定格消費電力と実際の消費電力の違いはどれくらいあるのか確認してみた
仕事の関係で、自動販売機(以下、自販機)を設置しています。
補充、掃除、集金などを除けば一度設置すればある程度は放置で大丈夫な自販機運営ですが、つい放置しすぎて
売上と電気代などの状況分析を怠ってしまう時があります。
意外に売上が少なく電気代の方が高くなってしまっていることに気付かない可能性を秘めています。
自販機の性能もかなり良くなり、省エネ化が進んでいます。昔からある自販機と仕様上の消費電力を比較すると驚くほどの差があることもよくあります。
仕様上の電気代と実際の電気代はどれぐらいなのか。
私のところで設置している自販機の電気代について改めて確認してみました。
自販機設置の概要
自販機設置にあたり、運営別に分けるとベンダー(いわゆる自販機運営業者)との契約により以下3パターンあります。
【①】場所を提供して電気代のみ負担
自販機にかかる業務は全てベンダーにまかせて、売上の何%かを収益として受け取り、電気代のみ負担する。
機械代も設置費用も無料。
【②】自販機を借りて自販機にかかる業務全般を自分でする
ベンダーから自販機を借りて補充や掃除、集金を自分でする。電気代も負担。
コカコーラやサントリーなど大手メーカーから借りることもできるが、この場合は、取り扱える商品はメーカー指定商品のみ。
設置費用、ダミー(商品サンプル)提供や、パーツ交換、故意ではない不具合は全て無料で対応してもらえる。
自販機設置には審査があります。
お願いしたら100%機械を提供してくれるわけではありません。
ベンダーに聞いたところ、以前は要望があればほとんどの場所で設置していたようですが、設置後は当然ながら、メンテナンス費用や人件費もかかります。
現状では設置済み自販機が膨大にあり、売上を稼げなければ費用だけがかさむため、条件をある程度厳しくしないと割に合わなくなっているとのこと。
なので、設置予定の場所と地域の状況など審査員が現地調査します。付近に似たような自販機が設置済み、人通りが少ないなどは、置いてもらえない可能性が高いです。
また、置いてもらえたとしても、大きな売上は見込めないと判断されていれば古めの自販機になるかもしれません。
【③】全部自分でする
自販機調達も業務も全部自分でします。
手間がかかる分、売上が伸びた場合はベンダーの取り分も無いので利益も大きいです。
中古自販機を扱っている業者やリサイクル店、ヤフオクなどでも出品されています。
古い型が多いので、不具合やパーツ供給量など古い型を購入する場合は注意が要です。
消費電力が高かったり、自販機そのものが実費購入になるので、不具合が出た時に自分で直せない場合は、どこかに修理依頼をしなければなりません。
以上3パターンですが、全てにおいて電気代の考慮は必須です。
電気代は大きく変動しないものの、売上があっても無くても一定でかかるので、消費電力が低いことにこしたことはありません。
私の運営パターンは上記全てです。ベンダー任せのもあれば自分でしているのもあります。
冷凍食品やドレッシング、ケーキ、ご当地グルメから昆虫食と、様変わりした自販機形態ですが、私の環境ではほとんどが昔ながらの飲料です。
現在、全部で7台。以前はもう少しあったのですが、土地権利や売上、メンテナンスコストの関係で撤去せざるを得なかったので減りました。
自販機の仕様上の消費電力(定格消費電力)と実際の消費電力の違い
詳しくは後述しますが、今回消費電力を調査するにあたり専用の電源で稼働している2台の自販機を対象にしました。日時は8月と9月使用分です。結論から言うと調査対象2台に関しては以下のような違いが出ました。
8月使用分 | 9月使用分 | |
定格消費電力(使用量) | 8,791円(343kWh) | 9,826円(378kWh) |
実際の消費電力 | 3,624円(147kWh) | 3,500円(141kWh) |
差 | -5,167円(-196kWh) | -6,326円(-237kWh) |
自販機は冷却と保冷の繰り返しです。基本的には冷却に電気をよく使い、所定の温度になれば保冷に切り替えるといった動作をします。保冷は消費電力が低くなるため、上記結果より自販機の稼働時間のうちほとんどが保冷時間だと予測できますね。
また、電灯にかかる電気代も含まれます。自販機の電灯にもLEDが使われるようになってきていますが、古い機種だと蛍光灯を使用している場合があります。蛍光灯だと消費電力が高いため、より多くの電力量が必要になります。
もし、電灯だけでも蛍光灯からLEDに変更できるのであれば、早く変えることをおすすめします。
自販機の電気代調査
一般的に電気設備は自販機の他に様々な電化製品と共用していると考えられるので、ワットチェッカー(消費電力が計測できる端末)のようなものを電源と自販機間に設置でもしない限りはなかなか分析が難しいです。
ですが、私が管理している内2台が電源を専用の電源から取っているので、今回はこの2台の電気代を調べます。すぐ横の電柱から電気取ってます。
この項以降、細かな計算が続きますので興味のある方は読んでみてください。
契約電力
この自販機が使っている電気は関西電力の「従量電灯A」という種別です。料金単価は以下の通り。
仕様上の消費電力(定格消費電力)の確認
ではまず仕様上の消費電力ですが、「定格消費電力」を基準にします。
ここでいう定格消費電力は、その機械がもつ機能を最大限使ったときの消費電力として扱います。
自販機内の冷却に使う電力と保冷で使う電力には強弱があると考えられるので、冷却、保冷を繰り返す自販機にとって定格消費電力と実際の消費電力とには差が生じます。
冬場にHOTにする場合はヒーターを使用するのでさらに電気代はあがりますが、私はHOTに切り替えるタイミングが気温次第により変動するのでここでは割愛します。また、自販機扉の開閉は週に1~2度ほどです。
自販機の定格消費電力は、自販機の前面や側面にプレートかシールが貼られていると思いますが、そこに表記されています。
左の自販機(白自販機)が「203W」、右の自販機(青自販機)が「290W」です。
白自販機のプレートが自販機同士の真ん中の隙間にあり、スペースが無さすぎて鮮明に画像取得できませんでしたが203Wと読み取れます。
今回は記事作成時点で直近の8月使用分(29日間)と9月使用分(32日間)の2ヶ月分をそれぞれ対象とします。日数が異なるのは、実際に算出された使用期間がその期間だったので合わせています。
消費電力を計算してみましょう。
計算方法は、「消費電力×使用時間×日数」です。kW換算のため1000で割ります。
8月使用分【29日間】 (使用期間8/11-9/8) | 9月使用分【32日間】 (使用期間9/9-10/10) | |
白自販機 | 141.288kWh (203W×24時間×29日÷1000) | 155.904kWh (203W×24時間×32日÷1000) |
青自販機 | 201.84kWh (290W×24時間×29日÷1000) | 222.72kWh (290W×24時間×32日÷1000) |
合計 | 343.128kWh(343kWh) | 378.624kWh(378kWh) |
料金単価に当てはめると以下の通り。
8月使用分 (343kWh) | 9月使用分 (378kWh) | |
15kWhまで | 341.01円(15kWh) | 341.01円(15kWh) |
15kWhをこえ120kWhまで | 2,132.55円(20.31円×105kWh) | 2,132.55円(20.31円×105kWh) |
120kWhをこえ300kWhまで | 4,627.8円(25.71円×180kWh) | 4,627.8円(25.71円×180kWh) |
300kWh超過分 | 1,234.1円(28.70円×43kWh) | 2,238.6円(78kWh×28.70円) |
合計 | 8,335.46円(8,335円) | 9339.96円(9,339円) |
上記が定格消費電力そのままで稼働したと仮定した場合の電気代です。
実際の請求額
実際の請求額を確認します。
下記は、今回調査した自販機の電気料金のお知らせです。(自販機横の電柱から取っている電源)
8月使用分(使用期間8/11-9/8)29日間
147kWh 3,624円
9月使用分(使用期間9/9-10/10)32日間
141kWh 3,500円
「燃料費調整額」、「再エネ促進賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」に関しては経済情勢などにより変動するので、帳尻を合わせるため定格消費電力で計算した金額にも実際の請求額と同じ額を加味して調整するとします。
発電に用いる燃料費は経済情勢(為替レートや原油価格等)の影響を大きく受けるため、電力会社の経営効率化に際し、燃料費の変動を迅速に電気料金に反映させる料金。
太陽光発電など適用される「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって電力の買取りに要した費用を電気使用量に応じて負担する料金。
ちなみに知人が独立電源で同じくらいの大きさの飲料自販機1台(定格消費電力は未確認)を比較的新しい機種で設置できているのですが、月1,400円程度だったそうです。新しい機種の省エネ性能がすごいのがわかります。
計算結果まとめ
各消費電力を以下にまとめることができました。
定格消費電力には条件を同じにするため実際に請求された変動費と同額の価格を加味しています。
■定格
8月使用分 | 9月使用分 | |
定格消費電力 | 8,335円 (343kWh) | 9,339円 (378kWh) |
燃料費調整額 | -36.71円 | 14.09円 |
再エネ促進賦課金 | 493円 | 473円 |
合計 | 8791.29円 (8,791円) | 9826.09円 (9,826円) |
■実際
8月使用分 | 9月使用分 | |
実際の消費電力 | 3167.73円(147kWh) | 3013.47(141kWh) |
燃料費調整額 | -36.71円 | 14.09円 |
再エネ促進賦課金 | 493円 | 473円 |
合計 | 3624.02円 (3,624円) | 3,500.56円 (3,500円) |
■定格消費電力電気料金と実際の消費電力電気料金の差
8月使用分 | 9月使用分 | |
定格消費電力(使用量) | 8,791円(343kWh) | 9,826円(378kWh) |
実際の消費電力 | 3,624円(147kWh) | 3,500円(141kWh) |
差 | -5,167円(-196kWh) | -6,326円(-237kWh) |
どちらも半分ほどの差が出る結果となりました。
まとめ
定格消費電力と実際の消費電力とにかなりの差があることがわかりました。
自販機設置を考える場合は、電気代はもちろんのこと、設置場所の地域状況や人通りなどを考慮する必要があります。
定格消費電力が低いことにこしたことはないですが、自販機扉の開閉による庫内の温度にも影響することが考えられるので、なるべく開けないよう運営することが望ましいですね。
見込み客以上に売上があったりなかったりで、実際のところ設置してみないとどれだけの売上があるかはわからないのでせめて電気代だけでもきっちり考慮する必要があります。
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